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ブログ 2025年6月23日 7分

バイオ燃料不正がEU RED III・米国RFSに与える衝撃と国際サステナ対応への教訓

Tian Daphne
Tian Daphne
Senior Copywriter
Amanda Herrera Miranda
Amanda Herrera Miranda
Policy Researcher

現在、EUのRED IIIや米国のRFS、国際航空のCORSIAなど、海外ではバイオ燃料の持続可能性を厳しく管理する規制が強まっています。日本企業は直接の規制対象ではなくとも、これらの市場への輸出や国際サプライチェーンの一員として認証が必須となるケースが多く、対応が避けられない課題です。また、国内でもバイオマス発電や燃料利用促進の制度が整い、持続可能性の証明がますます重要になる見込みです。この問題はバイオ燃料業界だけでなく、サステナビリティを目指す幅広い業種にとっても、安全で信頼できる認証体制の構築が不可欠なインフラとなっています。企業が環境への取り組みを裏付け、公的な信頼を取り戻すための仕組みが、これまで以上に求められているのです。本記事では、バイオ燃料認証の不正問題とその影響を整理し、企業が法令遵守と信頼構築を両立させるための実践的なトレーサビリティ強化策をご紹介します。

バイオ燃料認証不正の実態

2023年、供給された再生可能燃料は37億リットルにのぼり、その92.4%がISCCの認証を受けたものでした。
しかし、そのうち71.4%はEUおよび英国以外の地域からの輸入であり、これらの地域ではISCCに対する政府の監視も公式な認可も存在していません。

さらに、その約40%が「使用済み食用油」や「パーム油排水」など、リスクの高いサプライチェーン由来の原料とされています。ISCCが2025年3月に公開したデータによれば、認証された燃料の量が、実際の物理的な生産量を大きく上回っていることが判明しました【図1参照】。

Figure 1: Palm waste sludge use in the UK and EU versus estimated global production potential between 2015–2023 (BBC).

バイオ燃料業界への影響とは

2025年3月26日、EUバイオ燃料のサステナビリティ委員会が本問題に対応するために会合を開きました。
その中で、ISCCのような自主的な認証スキームにも言及されましたが、議論の中心はEU全体の認証制度の強化にありました。

SNSなどで流布された「ISCCが停止される」といった噂とは異なり、ISCCは停止対象ではありません。むしろ、ISCCは欧州委員会と緊密に連携しながら、既存のEC要件を上回る形で認証プロセスを強化するアクションプランに取り組んでいます。
さらに、認証制度の透明性向上のための重要ツールである「EUバイオ燃料統一データベース(UDB)」の構築にも引き続き貢献しています。

現在ECは、施行規則2022/996の改正を準備しており、ISCCはこの作業に対して現場レベルの知見を提供し、EU全体のサステナビリティ認証システムの強化に協力しています。

欧州バイオディーゼル協会(EBB)の提案

EBBも、バイオ燃料認証の信頼性向上に向けて、次のような包括的提案を公表しました

  • EU域内外での公平な競争環境を確保するための即時措置
  • 国外生産拠点への強制的な現地監査の義務化
  • EUバイオ燃料統一データベース(UDB)を活用した透明性強化
  • 各加盟国に対し、バイオ燃料の生産量や原料の管理・追跡を可能にする権限を付与
  • 違反時には、過去にさかのぼって認証を取り消すといった厳しい制裁措置

このような動きは、EU加盟国、業界団体、NGOからの強い要請を受けたものであり、欧州委員会も現在、認証制度の見直しに着手しています。
目的は、本当に持続可能なバイオ燃料のみが、REDの目標達成に貢献できるようにすることです。

英国でも高まる監視の目

一方、英国でも、再生可能輸送燃料義務制度(RTFO)の下でのバイオ燃料輸入に対し、サステナビリティ基準を満たしていない可能性があるとして当局の調査が進行中です。
特に注目されているのは、最大90%の排出削減効果がうたわれている水素化植物油(HVO)ディーゼル市場での不正疑惑です。

このように、バイオ燃料に関する国際的な規制環境は大きく揺れ動いており、日本企業がEUや英国市場にアクセスする際には、認証の信頼性やトレーサビリティの確保が一層重要なテーマとなっています。

  • 信頼の喪失:サステナビリティ主張への疑念

認証制度を活用して自社のサステナビリティ主張を証明してきたバイオ燃料企業にとって、今回の不正問題は深刻な評判リスクとなります。
もし認証制度そのものの信頼性が揺らげば、それを土台にしていた企業も第三者からの厳しい目を向けられる可能性があります。

  • 認証プロセスの厳格化とコスト増加

不正事案が相次いで報道される中、今後の認証プロセスはより厳格かつ高コスト化することが予想されます。

  • 規制当局による監査の頻度増加
  • 報告義務やデータ提出の範囲拡大
  • 対応のためのコンプライアンスコスト増

こうした措置は、EU域外や新興国にも拡大していく可能性があり、日本企業にとっても他人事ではありません。

  • バイオ燃料価格の上昇

認証の取得が困難になることで、バイオ燃料価格の上昇は避けられないでしょう。
これは、消費者や下流の事業者にも波及するコスト負担増を意味し、すでに不安定なエネルギー市場において、この影響は決して軽視できません。

こうしたリスクが高まる中で、バイオ燃料企業やその関係業者は、認証・コンプライアンス体制の再構築を迫られています。信頼を取り戻すには時間がかかりますが、すでに制度強化に向けた取り組みが始まっています。

現在、企業が真剣に向き合うべき課題は次の二点です。一つ目は、不正の被害者とならずに、いかにして「グリーンな信頼性」を維持するかということ。二つ目は、変化し続ける規制環境の中で、自社のサステナビリティに関する主張がどこまで通用するのかを見極めることです。