概要
サーキュラリティの共通言語を構築
サーキュラーエコノミーの実現を阻む最大の障壁は、データが不足していることではありません。データがサイロ化され、分断されていることです。業界ごとに異なるソフトウェア、データ形式、用語が使われているため、企業が情報を共有したいと考えても、互いのデータを理解できないケースが少なくありません。
Onto-DESIDEプロジェクトは、こうした課題の解決を目指して立ち上げられました。EUのHorizon Europeプログラムの支援を受け、6か国・12のパートナーからなるコンソーシアムは、共通のデータ言語(「オントロジー」)を基盤とするOpen Circularity Platform(OCP)を構築しました。このプラットフォームは、エレクトロニクス、建設、繊維という3つの業界を横断して機能します。
Circulariseはエレクトロニクス分野のユースケースを主導し、自社のプラットフォームが外部システムと接続できることを実証しました。これにより、まったく異なる業界に属する企業同士でも、手作業による翻訳を必要とせず、安全かつ自動的にデータを交換できることが示されました。
その成果は、実用可能なPoCとして結実しました。自動車業界のリサイクラーとエレクトロニクスメーカーが「同じ言語で」データをやり取りし、検証済みの情報を共有することで、新たなサーキュラーバリューチェーンを共に発見できることが実証されたのです。
サプライチェーンが複雑化する中、データをどのように管理・交換するかがますます重要になっています。共通の構造や用語を整備することで、透明性を高め、異なる事業者や業界間の連携を促進できます。特に、サーキュラリティやサステナビリティの実現において、こうした取り組みは重要な役割を果たします。
Neda Bahremandi
プロジェクトマネージャー、Rare Earth Industry Association(REIA)
プロジェクトの成果
本プロジェクトで確認された主な成果
本プロジェクトを通じて、異なる業界間でも共通のデータ基盤を活用し、安全かつ効率的に情報を共有できることが確認されました。
主な成果は以下の通りです。
- 業界横断の相互運用性エレクトロニクス、建設、繊維の各業界で同一のデータフレームワークを利用できることを検証し、業界ごとに分断されていたデータサイロの障壁を解消しました。
- 製品ライフサイクル全体にわたるトレーサビリティ音響システムおよびその個々の構成部品について、製造から修理、製品寿命終了まで、ライフサイクル全体を通じた追跡を実現しました。
- バリューチェーンの自動発見標準化されたデータを活用することで、ある業界から排出される廃棄物の流れと、別の業界が必要とする原材料を自動的にマッチングできることを実証しました。
- 安全なデータ共有Circulariseのスマートクエスチョニング技術が標準化されたデータ形式と連携し、機密情報を保護しながら、透明性と利用可能性を維持したデータ共有を実現できることを確認しました。
Onto-DESIDEについて
Onto-DESIDEは、Circularise、REIA、リンショーピング大学、Ragn-Sells、Lindner、Texon、+ImpaKT、Circular Fashion、Concular、IMEC、ハンブルク大学、プラハ大学からなる欧州のコンソーシアムです。Horizon Europeプログラムの支援を受け、サーキュラーバリューネットワークの形成を阻むデータ共有標準の不足という課題の解決を目指しています。
本プロジェクトでは、セマンティックデータの相互運用性を実現するオープン標準と分散型デジタルプラットフォームを活用し、人と機械の双方が情報を理解し、利用できる環境の構築を目指しています。
資源の流れ、情報の流れ、価値の流れを一つのつながったシステムとして捉えることで、Onto-DESIDEは欧州全体におけるデジタルトランジションとグリーントランジションの加速を支援します。
Circularise
Circulariseは、オランダ発のサプライチェーントレーサビリティプラットフォームです。企業のレジリエンス向上、排出量の削減、新たなビジネス価値の創出を支援しています。2016年の創業以来、原材料から最終製品に至るまで、サプライチェーン全体のデータを安全に収集・可視化し、製品のトレーサビリティを実現してきました。Circulariseのソリューションは、デジタルプロダクトパスポート(DPP)の導入を支援するとともに、ESPR(エコデザイン・持続可能な製品規則)、RED III(再生可能エネルギー指令 第3版)、欧州バッテリー規則など、各種規制への対応を円滑にします。サムソナイトやエアバスをはじめとするグローバル企業からも信頼を得ており、Circularise独自の特許技術により、機密性の高いデータを保護しながら、監査にも対応可能なインサイトを提供しています。2025年にはCircularise Japan株式会社を設立し、日本企業への支援体制をさらに強化しています。
コンソーシアムがCirculariseを選んだ理由
理論上のモデルにとどまらず、実際に運用可能な仕組みを構築するためには、業界をまたいだ相互運用性を確保しながら、機密性の高い産業データを扱えるプラットフォームが必要でした。
従来型の中央集権型データベースでは、データがサイロ化し、セキュリティ上のリスクも生じます。その結果、サーキュラリティの実現に不可欠なデータであっても、企業が共有をためらう要因となっていました。
Onto-DESIDEのオントロジーが共通の語彙を提供し、Circulariseがそれを実際の運用につなげる安全なインフラを提供しました。
求められていたのは、以下のような機能です。
- 異なる業界・システム間で、データの意味や定義が一致しない問題を解消する異なる業界が共通の語彙を用いて材料情報を記述できるようにすること。
- 分散型コミュニケーションの実現単一の事業者がサプライチェーン全体のデータを一元管理することなく、情報をやり取りできるようにすること。
- 知的財産の保護スマートクエスチョニング技術により、企業が機密情報や独自情報を開示することなく、材料特性を検証できるようにすること。
- 複雑な製品階層への対応特にエレクトロニクス製品において、個々の部品が異なるライフサイクルを持つことを考慮し、製品と部品の複雑な階層構造を扱えるようにすること。
- デジタルプロダクトパスポート(DPP)への対応これまでデータの分断によって実現が困難だった、サーキュラーな価値の流れを可能にすること。
- 異なるシステムとのAPI連携CirculariseとプロジェクトのOCPプラットフォームを接続し、異なるソフトウェア環境間でデータを連携できるようにすること。
Circulariseは、こうした安全なインフラを提供できるだけでなく、特にエレクトロニクス分野において、基盤となるデータ標準の開発にも積極的に貢献できるパートナーでした。
プロジェクトの内容
3業界を横断した検証
本プロジェクトでは、エレクトロニクス(Circulariseが主導)、建設(Concularが主導)、繊維(Circular Fashionおよび+ImpaKTが主導)という3つの異なるユースケースを通じて、業界をまたいでデータの意味を共通化し、相互に利用できる仕組みを検証しました。
ここでは、その中でもエレクトロニクス分野のユースケースで実施された取り組みをご紹介します。
Step 1:データの共通基盤を定義
Circulariseはパートナー企業と連携し、Onto-DESIDEのオントロジーが電気・電子機器(EEE)業界の実務に適合するよう取り組みました。
具体的には、材料に関するデータを共通の定義で扱えるようにし、例えば「プラスチック製筐体」や「レアアース磁石」といった部材が、サプライチェーン全体で同じ意味として記述される仕組みを整備しました。
さらに、各バリューチェーンにおいて、どのデータを追跡・記録する必要があるかも定義しました。これにより、バリューチェーンの各段階で必要となる活動を支援するとともに、法規制や各種基準への適合を証明できるようにしました。

Step 2:修理・再利用を通じた製品のトレーサビリティ
パイロット製品として音響システムを用い、Circulariseは完成品全体と主要な構成部品それぞれについて、デジタルプロダクトパスポート(DPP)を作成しました。
音響システムの部品に修理が必要になった際には、DPPを通じて修理事業者に必要な材料情報や技術情報を提供しました。これにより、部品を廃棄するのではなく、修理・再生して使い続けることが可能になりました。
その後、修理の履歴もDPPに追加して記録しました。これにより、音響システムが将来再び使用される場合や、最終的に廃棄される際にも、これまでの完全な履歴に基づいて適切な判断を行えるようになります。



Step 3:新たなサーキュラーバリューチェーンを自動的に発見
データの項目や意味を共通のルールで整理することで、企業が新たなパートナー候補を自動的に発見できることを実証しました。
例えば、プラットフォームが特定の電子廃棄物の流れと、繊維や建設など異なる業界のメーカーが求める材料要件との適合性を自動的に特定することが可能です。
これにより、これまで接点のなかった企業同士でも、廃棄物や副産物を新たな資源として活用できる可能性を見いだし、新しいサーキュラーバリューチェーンの形成につなげられます。
プロジェクトの成果:本プロジェクトで実証されたこと
- 業界横断の相互運用性を実現Circularise独自のデータをOnto-DESIDEの共通データ体系に対応付けることで、異なるソフトウェアシステム間でもシームレスにデータを連携できることを検証しました。同じフレームワークを、エレクトロニクス、建設、繊維の各業界に適用できることも実証しました。
- デジタルプロダクトパスポート(DPP)を実装音響システムとその構成部品について、製造から修理、製品寿命終了までの履歴を追跡することに成功しました。これにより、DPPが「修理する権利」を支援するための具体的なモデルを示しました。
- サーキュラーな資源活用の可能性を自動的に発見オントロジーを用いてデータを標準化することで、電子廃棄物の流れと、他業界が必要とする二次原料のニーズを自動的にマッチングできることを実証しました。
- 資源回収の高度化レアアース元素や添加剤に関する詳細なデータを提供することで、重要な原材料を高い価値でリサイクルできる可能性を高めました。
- 安全なデータ共有を検証Circulariseのスマートクエスチョニング技術が標準化されたオントロジーと連携し、プライバシー保護とデータの透明性を両立できることを確認しました。
- 規制要件との整合性を確保本プロジェクトの成果は、ESPRに基づくEUのデジタルプロダクトパスポート制度において求められるデータ要件に直接対応するものです。
今後の展望:パイロットプロジェクトからさらなる展開へ
Onto-DESIDEプロジェクトを通じて、Circulariseのプラットフォームがグローバルサプライチェーンにおける「翻訳者」として機能できることが示されました。
本プロジェクトで開発された、データの意味や定義を共通化するアプローチは、初期のユースケースにとどまらず、今後、他の業界にも展開していくことが可能です。Circulariseは、Onto-DESIDEで得られた知見を活かし、次世代の自動化・AI活用型のサーキュラーエコノミーに対応できる、標準化された材料情報の活用を企業に提供していきます。
サーキュラーエコノミーを大規模に実現するためには、データを異なるシステムや業界間で相互に利用できるようにすることが不可欠です。CirculariseとOnto-DESIDEコンソーシアムの協業は、企業が同じデジタル言語でデータをやり取りできれば、より効果的に連携し、廃棄物を削減し、よりレジリエントなバリューチェーンを構築できることを示しています。
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Circulariseがサプライチェーンをどのように支援できるかをご覧ください。
サプライヤーデータの収集からデジタルプロダクトパスポートまで、このプラットフォームは拡張性のあるトレーサビリティを実現するために構築されています。