Case studies
Teijin Limited

Traceability as strategy: How Teijin is scaling circularity with Digital Product Passports

In a collaborative effort to meet the rising demand for circularity, Teijin Limited partnered with Circularise to develop Digital Product Passports (DPPs). This project successfully traced materials from the factory to recycled content, demonstrating large-scale traceability. The findings are now guiding Teijin's next steps toward a circular economy, backed by a strategic investment in Circularise.

企業名
Teijin Limited
業種
Chemical
従業員数

帝人は、サーキュラーエコノミーへの移行を力強く推進していく決意を持っています。Circularise社との協業を通じて、サプライチェーンの透明性に向けた確かな基盤を築いています。Circularise社をパートナーに選んだ理由は、同社の高い専門性と革新的なプラットフォームにあります。このプラットフォームは、私たちとお客様が迅速な成果を上げ、規制要件に対応しつつ、自社データの管理を維持することを可能にしています。

Gerke Spaling
New Business Development Manager, Teijin Brightlands Innovation Center
製品ライフサイクル全体のトレーサビリティ

生産段階から市場投入、さらにリサイクルに至るまで、トレーサビリティを実現

サプライチェーンに関する情報の取得

サプライチェーンパートナーの対応状況とデータ統合に関するインサイトを取得

デジタルプロダクトパスポート

全社でのDPP導入と法規制対応を支える基盤を構築

帝人株式会社(東証:3401)は、先端技術を基盤とし、「高機能素材」と「ヘルスケアソリューション」の2つの事業を柱とするグローバル企業グループです。1918年に日本初のレーヨンメーカーとして設立され、現在では約20か国にわたり約170社、2万人の従業員を擁しています。帝人は、企業理念である「人と地球の未来に貢献するソリューションを共に創造する」に基づき、従業員や外部パートナーと協働しながら、長期ビジョン「未来社会を支える企業へ」の実現を目指しています。2025年3月期には、連結売上高1兆55億円、総資産1兆613億円を計上しました。

Circulariseは、オランダ発のサプライチェーン・トレーサビリティ・プラットフォームで、企業のレジリエンス向上、排出量削減、新たなビジネス価値の創出を支援しています。2016年の創業以来、原料レベルから最終製品に至るまで、全体を通してデータを収集・可視化する、安全な製品トレーサビリティを実現してきました。当社のソリューションは、デジタルプロダクトパスポート(DPP)の導入を支援するとともに、ESPR(エコデザイン製品規則)、RED III(再生可能エネルギー指令 第3版)、欧州バッテリー規則といった各種規制への対応をスムーズにします。サムソナイト、エアバスなどのグローバル企業からも信頼を得ており、Circularise の特許技術によって機密性の高いデータを守りながら、監査対応可能なインサイトをご提供します。

starting with traceability

帝人がトレーサビリティ実現のためにCirculariseを選んだ理由

帝人は長年にわたり、サステナブル・イノベーションのパイオニアとして歩んできました。1995年にPETリサイクル製品「ECOPET®」を発売し、さらに25年以上前にはリサイクル原料を活用したパラ系アラミド「TWARON®」を開発するなど、持続可能性は同社のDNAに深く根付いています。

その取り組みは製品にとどまらず、溶剤や工程水のリサイクルなど、環境負荷を低減する社内回収プロセスにも及んでいます。

近年、帝人の経営陣は素材産業における重要な転換点を見据えました。従来の「大量生産・大量消費・大量廃棄」モデルはもはや持続可能ではありません。これを受け、同社は全素材事業における循環型社会への移行をリードするため、「環境ソリューション部」を新設しました。

この取り組みは、帝人の掲げるビジョン「人と地球の未来に貢献するソリューションを共に創造する」と完全に合致しています。

デジタルプロダクトパスポート(DPP)は、この戦略を実現するための重要な手段として急速に注目されました。DPPは、規制の強化に対応しつつ、サプライチェーン全体での持続可能な取り組みを検証するために必要な透明性を提供します。

しかし、大規模なトレーサビリティの実装には、社内システムだけでは不十分でした。帝人は、技術力、セキュリティ、業界知見を兼ね備えた外部パートナーを必要としていました。慎重な評価の結果、帝人が求めたのは以下の条件を満たすパートナーです。

  • 製品ライフサイクル全体にわたる、安全かつ検証可能なトレーサビリティ
  • 既存システムや国際標準との相互運用性
  • 変化する規制への適合支援
  • 透明性と機密性のバランス
  • ベストプラクティスや法的枠組みに関する専門知識

Circulariseはこれらすべての条件を満たしました。概念実証(PoC)の成功により適合性が確認され、2024年末には戦略的投資を通じて両社の関係をさらに強化しました。このパートナーシップにより、帝人は線形モデルから真の循環型製品ライフサイクルへの移行を支えるデジタル基盤を手に入れ、原料からリサイクルまでの可視性を確保することが可能になります。

building a practical experience

トレーサビリティを実践的に検証するためのPoCを実施

帝人とCirculariseの協業は、特定市場・用途におけるアラミド製品のトレーサビリティを中心としたPoCから始まりました。
製品オーナーである帝人アラミドは、PoCを以下の明確な目的のもとで設計:

  • クレードル・ツー・クレードルのトレーサビリティを検証
    工場から使用後のリサイクルまで、製品を追跡できることを実証
  • 市場の反応を把握:高性能繊維分野の顧客やステークホルダーが循環型取り組みにどう反応するかを理解
  • 実践的な経験の蓄積:大規模なトレーサビリティやデジタルプロダクトパスポートの導入に必要な要素を学習

PoCは、技術を試すだけでなく、トレーサビリティが長期的な競争力の向上やサプライチェーン全体での新たな価値創出にどのように寄与するかを評価する機会にもなりました。

帝人はさらに、PoCの成果をもとに以下のような問いに答えることを目指しています。

  • 潜在的な財務的・戦略的リターンはどの程度か?
  • トレーサビリティは将来の規制遵守をどのように支援できるか?
  • 透明性の向上は顧客の信頼や体験にどの程度寄与するか?
circular loop

デジタルプロダクトパスポートによるトレーサビリティの拡大

帝人とCirculariseによる最初のPoCは、高機能素材分野における循環型モデルが実現可能であるだけでなく、定量的に評価でき、かつ拡張可能であることを示しました。このパイロットでは、帝人のTwaron®パラアラミド糸を対象に、素材のライフサイクル全体を追跡しました。

循環型モデルの実践例:

  • 素材の生産:帝人が高性能で軽量なTwaron®糸を製造
  • 製品製造:糸はHampidjan社に供給され、100%リサイクル可能なヘビーリフトスリング「TERRA Slings」の製造に使用
  • 使用後の回収:使用期間終了後、スリングは回収され、素材は再生・洗浄
  • 再利用への市場投入:高品質に再生されたパラアラミド糸は、原料として再利用可能。これにより、ブレーキパッドやガスケットなどの用途に用いられる循環型Twaron®パルプを生産可能

PoCから得られた主な成果:

    • DPPの発行:Twaron®糸、TERRA Sling、リサイクルTwaron®パルプの3つの製品について、一般公開可能なDPPを発行。
    • エンドツーエンドのトレーサビリティ実現:素材を生産からリサイクル、そして再び製造に戻るまで追跡。
    • 原材料の透明性を証明:DPPを連携することで、新製品に使用されたリサイクル原料の由来を確認可能にし、透明性と監査性の高いサプライチェーンを構築。
    本プロジェクトを通じて、Circulariseのプラットフォームは素材の構成、流通、リカバリーに関する詳細な可視化を実現しました。これにより、帝人およびパートナー企業は、回収された糸が自信と確信をもって再びサプライチェーンに組み込まれるプロセスを追跡できるようになりました。

今回のPoCを通じて、トレーサビリティの実践的な活用に関する貴重な知見を得ることができました。DPPがサプライチェーンのパートナーをシームレスにつなぎ、真に透明性のある循環型プロセスを実現できることを直接確認しました。この取り組みは、トレーサビリティがサーキュラーエコノミーの重要な推進力であるという私たちの考えを一層強固なものとし、Circulariseとの協力が、持続可能な取り組みを事業全体に拡大していく戦略を形作るうえで大きな支えとなっています。

Philip Altena
Director Sustainability, Teijin Aramid

今回の成果に後押しされ、帝人はトレーサビリティの活用をグループ各社へ拡大しました。第2回目のPoCでは、Teijin Carbon Europeが以下の製品に対してDPPを導入しました。

  • Tenax™ フィラメントヤーン残渣(原材料)
  • ペレット化された循環型 Tenax Next™ ショートカーボンファイバー(中間製品)
  • 循環型ファイバーを用いた完成品 — 自転車用タイヤレバー

これらの新たなDPPは、特定の廃棄物フローを新たな製品に再利用できることを示し、帝人のクローズドループ型ものづくりの実現に向けたビジョンをさらに後押しするものとなりました。

今年、当社は Tenax Next™ 製品ラインを立ち上げ、サーキュラリティに向けた大きな一歩を踏み出しました。これらの素材は、最高水準のパフォーマンスと明確なサステナビリティ特性を兼ね備えるよう設計されています。さらに、DPPのようなトレーサビリティツールにより、その価値をサプライチェーン全体で「見える化」し、確実に検証できるようになっています。

Dr. Julian Lowe
Global Industrial Group Manager, Teijin Carbon
next steps

今後の展望:競争優位性としてのトレーサビリティ

ESPRやCSRDといった規制が業界のあり方を変えつつある中で、帝人にはサイロ化されたデータや手作業のレポーティングに縛られない、スケーラブルかつ将来を見据えたアプローチが求められていました。ここで同社には選択肢がありました。トレーサビリティを単なるコンプライアンス対応として扱うのか、それとも長期的な競争優位性を築くための手段とするのか。

帝人はパイロットプロジェクトにとどまらず、法規制を待つこともしませんでした。最初のPoCを成功させた後、Circulariseへの戦略的投資を行い、パートナーシップを強化するとともに、グローバル全体でのトレーサビリティ展開を加速させました。

次のフェーズでは、複数の事業部門においてDPPの活動を拡大することに重点を置いています。社内のデータシステムの統合、サプライチェーンとの協働の深化、そして製品開発へのトレーサビリティの組み込みを通じて、帝人は新たな価値を創出し、サーキュラリティを事業の中核に据えることを目指しています。

高機能材料分野のリーディングカンパニーとして、帝人はサーキュラーへの取り組みを一層強化しています。Circulariseへの投資により、トレーサビリティ分野の先進企業との協業が可能となり、今後の適切な一歩を踏み出すための環境を整えることができます。

Ton de Weijer
General Manager of Teijin’s Brightlands Innovation Center (TBIC)

このパートナーシップは、持続可能性と戦略が融合したときに実現可能なことを示しています。Circulariseと帝人は協働することで、トレーサビリティが単に規制に対応する以上の価値を持ち、産業の運営方法を変革し、信頼を構築し、持続的な環境・経済的成果を生み出せることを証明しています。

帝人の取り組みは、持続可能性目標と市場ニーズの重要な交差点を力強く示しています。今回の協業により、Circulariseの革新的なプラットフォームを活用することで、帝人はDPPの運用効果を実証するだけでなく、業界全体に変革をもたらす共同の可能性を引き出し、長期的な環境への影響とビジネスの成功を確かなものにしました。

トレーサビリティシステムに関するご質問

トレーサビリティが、コンプライアンスの遵守、競争力の強化、そして循環型ビジネスの拡大に役立つか、是非弊社チームまでご相談ください。

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