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Ziva Buzeti
Policy Researcher

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2025年2月26日、欧州委員会は「オムニバスパッケージ」と呼ばれる法案を提案しました。これは、特定のサステナビリティ報告に関する法制度を簡素化することで、EU企業がサステナビリティ義務に対応しやすくすることを目的としています。2025年4月3日の採決では、この提案に含まれる「ストップ・ザ・クロック(stop-the-clock)」メカニズムが承認され、欧州各地で大きな話題となりました。企業や関係者は、その影響と変更への対応方法を理解しようと注目しています。「ストップ・ザ・クロック」とは、オムニバスの適用範囲内にある特定の指令における締切日の変更(延期)を即座に適用する仕組みを指します。
しかし、簡素化が進められる一方で、これらの規制の基本的な目的は変更されていません。また、日本企業を含むEU域外企業にも引き続き適用され、欧州のサステナビリティ基準の遵守が求められる点は変わりません。

本記事では、提案された主要な変更点と、既に承認された「ストップ・ザ・クロック」メカニズムなどの変更点、日本企業が抑えるべき主要な欧州規則について解説します。

EUオムニバス規則とは

オムニバス規則とは、EU内の複数の法制度を一つのパッケージにまとめて簡素化することを目的とした提案規則です。この簡素化の主な目的は、EU企業の競争力を強化することであり、企業がサステナビリティ要件をより容易に遵守できるようにし、グローバル市場での競争力を高めることにあります。これにより、企業は事務負担を軽減しながら、サステナビリティ報告の改善を進めることが可能になります。

オムニバス提案によって影響を受ける法制度とは

欧州委員会のオムニバス簡素化パッケージは、主要なサステナビリティ関連規制に対する改訂と明確化を提案しており、要件の合理化と事務負担の軽減を目的としています。オムニバスによる変更の対象となる規制は以下の通りです。

  • 企業のサステナビリティ報告指令(CSRD)
  • 企業のサステナビリティ・デューデリジェンス指令(CS3D)
  • EUタクソノミー規則
  • 企業国境調整メカニズム(CBAM)

「ストップ・ザ・クロック(stop-the-clock)」メカニズムに関する採決では、いくつかの提案が承認されましたが、他の提案についてはまだ採決が行われていません。既に承認されたルールと、未だ採決待ちのルールがあります

オムニバス規則の承認済みルール:主要な変更点(2025年5月時点)

オムニバス「ストップ・ザ・クロック」メカニズム

2025年4月3日、欧州議会は「ストップ・ザ・クロック」メカニズムの導入を承認しました。これは、企業のサステナビリティ報告指令(CSRD)および企業のサステナビリティ・デューデリジェンス指令(CS3D)の両方に影響を及ぼすもので、特定の企業グループに対してCSRDの報告期限を2年間延期する仕組みです。

【ストップ・ザ・クロック】各企業グループの報告期限の変更内容

枠組み1:既に非財務報告指令(NFRD)の対象となっている従業員500名超の企業

  • 期限:変更なし。
  • 2024年度のCSRD対応報告書は予定通り2025年に提出が必要。

枠組み2:特定の基準(例:従業員250名超または純売上高4,000万ユーロ超)を超える大規模非上場企業およびグループ:

  • 期限:2年の延期
  • 以前の期限:2026年(2025年度の報告)
  • 新しい期限:2028年。2025年度の報告書提出が2028年まで延期。

枠組み3:小規模および中規模の公益性企業

  • 期限:2年の延期
  • 以前の期限:2027年(2026年度の報告)
  • 新しい期限:2029年。2026年度の報告書提出が2029年まで延期。

枠組み4:EU市場で事業を展開する非EU企業 ←日本企業の適用

  • 期限:変更なし。
  • 2028年度のCSRD報告書は2029年に提出が必要。
Figure 1: A table showing the changes in deadlines for CSRD and CS3D in light of the Omnibus “stop-the-clock” mechanism.

今後の見通し

オムニバスの「ストップ・ザ・クロック」メカニズムは承認されました。しかし、CSRD、CS3D、CBAM、タクソノミー規則に関する変更提案はまだ承認されていません。欧州議会はこれらの提案について、2025年10月まで採決を行わない予定です。したがって、それまでは元の法制度の内容が適用され、対象範囲や報告要件は変更されず、現行のままとなります

Figure 2: Timeline of the European Parliament Committee on Legal Affairs (JURI) regarding what happens next with the Omnibus.

採決待ち:オムニバス規則の議論が続く内容

EUオムニバスパッケージに関する現在進行中の交渉の一環として、大規模企業に大きな影響を与える可能性のある一連の改正案が提出されています。これらの提案はまだ議論中で、最終決定や採決は行われていませんが、その適用範囲や実施方法は今後変わる可能性があります。以下に、オムニバスの影響を受ける主要な法制度ごとの提案内容をまとめます。

企業のサステナビリティ報告指令(CSRD)

CSRDの適用範囲が従業員1,000人超の企業に限定される可能性があり、これによりより多くの中小企業が適用除外となる見込みです。また、欧州委員会は欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)の簡素化を提案しており、業界別のESG開示の変更も含まれています。これらの措置は、報告の透明性を維持しつつ、事務負担を軽減することを目的としています。加えて、バリューチェーン報告要件は「バリューチェーン・キャップ」の強化により強化され、サプライチェーン内の追跡可能性の重要性が高まる可能性があります。

企業のサステナビリティ・デューデリジェンス指令(CS3D)

オムニバス提案では、デューデリジェンス義務を直接の取引先に限定する方向性が示されています。これにより、企業がサプライチェーンの先の悪影響を合理的に把握していない限り、責任範囲が限定されます。また、罰則の枠組みも調整され、EU全体での民事責任規定の設置は見送られ、加盟国ごとの法制度に委ねられることで、各国の柔軟な運用が可能となる見込みです。

EUタクソノミー規則

改正CSRDの適用基準に合わせ、EUタクソノミーの適用も従業員1,000人超の企業に限定される可能性があります。さらに、参加に対する選択制(オプトイン)メカニズムも提案されています。重要な点として、義務付けられる報告テンプレートの数を約70%削減することが提案されており、コンプライアンス要件の合理化と重要な開示事項への集中が図られます。

カーボン国境調整メカニズム(CBAM)

CBAMにはいくつかの技術的調整が検討されています。新たに導入される「デ・ミニミス」基準では、年間50トン未満の対象品を扱う輸入業者は義務から免除され、中小企業や個人に有利になる見込みです。この基準を超える輸入業者向けには簡素化手続きが提案されています。さらに、CBAM申告の年間提出期限は5月31日から8月31日に延期され、証明書販売の開始も2026年1月1日から1年間遅れ、2027年1月1日となる予定です。

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July 28, 2025
15分

EUオムニバス規則で何が変わるのか?注目の改正ポイントまとめ

Ziva Buzeti
Policy Researcher
Tian Daphne
Senior Copywriter

Circularise is the leading software platform that provides end-to-end traceability for complex industrial supply chains

2025年2月26日、欧州委員会は「オムニバスパッケージ」と呼ばれる法案を提案しました。これは、特定のサステナビリティ報告に関する法制度を簡素化することで、EU企業がサステナビリティ義務に対応しやすくすることを目的としています。2025年4月3日の採決では、この提案に含まれる「ストップ・ザ・クロック(stop-the-clock)」メカニズムが承認され、欧州各地で大きな話題となりました。企業や関係者は、その影響と変更への対応方法を理解しようと注目しています。「ストップ・ザ・クロック」とは、オムニバスの適用範囲内にある特定の指令における締切日の変更(延期)を即座に適用する仕組みを指します。
しかし、簡素化が進められる一方で、これらの規制の基本的な目的は変更されていません。また、日本企業を含むEU域外企業にも引き続き適用され、欧州のサステナビリティ基準の遵守が求められる点は変わりません。

本記事では、提案された主要な変更点と、既に承認された「ストップ・ザ・クロック」メカニズムなどの変更点、日本企業が抑えるべき主要な欧州規則について解説します。

EUオムニバス規則とは

オムニバス規則とは、EU内の複数の法制度を一つのパッケージにまとめて簡素化することを目的とした提案規則です。この簡素化の主な目的は、EU企業の競争力を強化することであり、企業がサステナビリティ要件をより容易に遵守できるようにし、グローバル市場での競争力を高めることにあります。これにより、企業は事務負担を軽減しながら、サステナビリティ報告の改善を進めることが可能になります。

オムニバス提案によって影響を受ける法制度とは

欧州委員会のオムニバス簡素化パッケージは、主要なサステナビリティ関連規制に対する改訂と明確化を提案しており、要件の合理化と事務負担の軽減を目的としています。オムニバスによる変更の対象となる規制は以下の通りです。

  • 企業のサステナビリティ報告指令(CSRD)
  • 企業のサステナビリティ・デューデリジェンス指令(CS3D)
  • EUタクソノミー規則
  • 企業国境調整メカニズム(CBAM)

「ストップ・ザ・クロック(stop-the-clock)」メカニズムに関する採決では、いくつかの提案が承認されましたが、他の提案についてはまだ採決が行われていません。既に承認されたルールと、未だ採決待ちのルールがあります

オムニバス規則の承認済みルール:主要な変更点(2025年5月時点)

オムニバス「ストップ・ザ・クロック」メカニズム

2025年4月3日、欧州議会は「ストップ・ザ・クロック」メカニズムの導入を承認しました。これは、企業のサステナビリティ報告指令(CSRD)および企業のサステナビリティ・デューデリジェンス指令(CS3D)の両方に影響を及ぼすもので、特定の企業グループに対してCSRDの報告期限を2年間延期する仕組みです。

【ストップ・ザ・クロック】各企業グループの報告期限の変更内容

枠組み1:既に非財務報告指令(NFRD)の対象となっている従業員500名超の企業

  • 期限:変更なし。
  • 2024年度のCSRD対応報告書は予定通り2025年に提出が必要。

枠組み2:特定の基準(例:従業員250名超または純売上高4,000万ユーロ超)を超える大規模非上場企業およびグループ:

  • 期限:2年の延期
  • 以前の期限:2026年(2025年度の報告)
  • 新しい期限:2028年。2025年度の報告書提出が2028年まで延期。

枠組み3:小規模および中規模の公益性企業

  • 期限:2年の延期
  • 以前の期限:2027年(2026年度の報告)
  • 新しい期限:2029年。2026年度の報告書提出が2029年まで延期。

枠組み4:EU市場で事業を展開する非EU企業 ←日本企業の適用

  • 期限:変更なし。
  • 2028年度のCSRD報告書は2029年に提出が必要。
Figure 1: A table showing the changes in deadlines for CSRD and CS3D in light of the Omnibus “stop-the-clock” mechanism.

今後の見通し

オムニバスの「ストップ・ザ・クロック」メカニズムは承認されました。しかし、CSRD、CS3D、CBAM、タクソノミー規則に関する変更提案はまだ承認されていません。欧州議会はこれらの提案について、2025年10月まで採決を行わない予定です。したがって、それまでは元の法制度の内容が適用され、対象範囲や報告要件は変更されず、現行のままとなります

Figure 2: Timeline of the European Parliament Committee on Legal Affairs (JURI) regarding what happens next with the Omnibus.

採決待ち:オムニバス規則の議論が続く内容

EUオムニバスパッケージに関する現在進行中の交渉の一環として、大規模企業に大きな影響を与える可能性のある一連の改正案が提出されています。これらの提案はまだ議論中で、最終決定や採決は行われていませんが、その適用範囲や実施方法は今後変わる可能性があります。以下に、オムニバスの影響を受ける主要な法制度ごとの提案内容をまとめます。

企業のサステナビリティ報告指令(CSRD)

CSRDの適用範囲が従業員1,000人超の企業に限定される可能性があり、これによりより多くの中小企業が適用除外となる見込みです。また、欧州委員会は欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)の簡素化を提案しており、業界別のESG開示の変更も含まれています。これらの措置は、報告の透明性を維持しつつ、事務負担を軽減することを目的としています。加えて、バリューチェーン報告要件は「バリューチェーン・キャップ」の強化により強化され、サプライチェーン内の追跡可能性の重要性が高まる可能性があります。

企業のサステナビリティ・デューデリジェンス指令(CS3D)

オムニバス提案では、デューデリジェンス義務を直接の取引先に限定する方向性が示されています。これにより、企業がサプライチェーンの先の悪影響を合理的に把握していない限り、責任範囲が限定されます。また、罰則の枠組みも調整され、EU全体での民事責任規定の設置は見送られ、加盟国ごとの法制度に委ねられることで、各国の柔軟な運用が可能となる見込みです。

EUタクソノミー規則

改正CSRDの適用基準に合わせ、EUタクソノミーの適用も従業員1,000人超の企業に限定される可能性があります。さらに、参加に対する選択制(オプトイン)メカニズムも提案されています。重要な点として、義務付けられる報告テンプレートの数を約70%削減することが提案されており、コンプライアンス要件の合理化と重要な開示事項への集中が図られます。

カーボン国境調整メカニズム(CBAM)

CBAMにはいくつかの技術的調整が検討されています。新たに導入される「デ・ミニミス」基準では、年間50トン未満の対象品を扱う輸入業者は義務から免除され、中小企業や個人に有利になる見込みです。この基準を超える輸入業者向けには簡素化手続きが提案されています。さらに、CBAM申告の年間提出期限は5月31日から8月31日に延期され、証明書販売の開始も2026年1月1日から1年間遅れ、2027年1月1日となる予定です。

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なぜサプライチェーンのトレーサビリティと透明性が重要であり続けるのか

オムニバス規則では一部の調整が提案されていますが、サステナビリティ報告関連の基本的な要件は変わりません。変更が採用されるかどうかにかかわらず、主要な義務は引き続き適用され、企業はこれらを自社の事業活動に組み込む必要があります。以下は、CSRD、CS3D、タクソノミー規則、CBAMにおいて変わらない重要なルールです。

  • 1,000人以上の従業員の基準には、より大きなグループに属する企業も含まれる
  • 非EU企業に対する規則および報告期限は変わらない
  • CSRDにおける「ダブルマテリアリティ(双方向の重要性)」の評価
  • CSRDのWave 1およびWave 4の報告期限
  • CS3Dの適用基準(しきい値)
  • CS3Dにおける限定的保証(リミテッドアシュアランス)要件
  • しきい値を超えるCBAM輸入業者の報告義務

EUグリーンディールの中には、バリューチェーン全体にわたるトレーサビリティと透明性を求める規制がまだ数多く存在しており、これらはオムニバス規則の影響を受けません。

There are still many regulations within the EU Green Deal that call for traceability and transparency throughout the value chain, which the Omnibus does not affect. Additionally, businesses should take note that there are many other EU regulations that still require digital product passports (DPPs).

Figure 3: An overview of the various deadlines of EU regulations and directives that lie outside of the scope of the Omnibus and remain mandatory to follow.

持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)

ESPRは、製品の耐久性、修理可能性、エネルギー効率など、製品のライフサイクル全体にわたる性能および情報要件を設定することで、製品のサステナビリティを高めることを目的としています。これは従来のエコデザイン指令に代わるもので、エネルギー関連製品に限らず、より幅広い製品群を対象にその範囲を拡大しています。

ESPRの重要な要素の一つが、さまざまな製品カテゴリーに対して義務付けられるデジタルプロダクトパスポート(DPP)の導入です。これにより、製品の環境サステナビリティ性に関する詳細かつ標準化された情報が提供され、消費者の選択の質向上、リサイクル効率の向上、サプライチェーン全体での製品追跡の改善が期待されます。

企業は、新しいサステナビリティ要件に製品が適合するように、製品の設計変更や持続可能な素材の調達、消費者への詳細な製品情報の提供などに対応する必要があります。

ESPRの主なスケジュール

  • 2026年1月:繊維製品および家具製品のDPPに関する委任行為の公表
  • 2026年7月:販売されなかった消費者製品の破棄の正式禁止
  • 2027年:次の対象製品群の発表
  • 2027年7月:繊維製品および家具製品のDPPに関する委任行為の施行

バッテリー規則

EUのバッテリー規則は、バッテリーのライフサイクル全体に焦点を当て、持続可能性、安全性、循環性を促進することを目的としています。原材料の調達、生産、表示、リサイクルに関する要件を定め、環境負荷の軽減を図っています。

バッテリーのサプライチェーンに関わる企業は、責任ある原材料調達を確保し、リサイクル効率の目標を達成するとともに、バッテリーパスポートでバッテリーのカーボンフットプリントやリサイクル材の含有量に関する詳細情報を提供しなければなりません。

バッテリー規則の主なスケジュール

  • 規則は2023年に施行され、さまざまな規定が2024年から2030年にかけて適用されます。
  • 例えば、2030年からはバッテリーに含まれるリサイクル材の最低含有率が義務付けられます。

重要原材料法(CRMA)

CRMAは、EUのグリーンおよびデジタル転換に不可欠な重要原材料の持続可能で強靭な供給を確保することを目的としています。これには、これらの原材料の採掘、加工、リサイクルにおける国内能力の目標設定が含まれます。

CRMAの主なスケジュール

  • 2025年3月25日:戦略的プロジェクトのリストが発表されました。
  • 2030年:EUは重要原材料の特定の能力目標の達成を目指しています。

EU森林破壊規則(EUDR)

EUDRは、森林破壊に関連する製品の輸入および販売を防止することを目的としています。企業は、牛肉、ココア、コーヒー、パーム油、ゴム、大豆、木材、およびそれらの派生製品が森林破壊に関連していないことを確認するためのデューデリジェンスを実施する必要があります。

遵守するために、事業者は強固なトレーサビリティシステムを構築し、生産地域の位置情報データを収集し、製品が森林破壊フリーであることを示すために現地の法律遵守を確保しなければなりません。

EUDRの主なスケジュール

  • 2025年12月30日:大規模事業者およびトレーダーの遵守義務開始
  • 2026年6月30日:中小規模・マイクロ企業の遵守義務開始

化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則(REACH)

REACHは、EUにおける化学物質の製造および使用を包括的に規制する法律です。2007年に施行され、2018年から報告義務が課されています。企業は、EUで製造・販売する化学物質に関連するリスクを特定・管理する必要があります。

企業は、製造または輸入するすべての物質を欧州化学物質庁(ECHA)に登録しなければなりません。また、安全性情報をサプライチェーン全体に伝達し、該当する物質の制限や認可要件を遵守する必要があります。

EU強制労働製品禁止規則(Forced Labour Regulation:FLR)

EU強制労働製品禁止規則(FLR)は、2024年12月に施行されました。この規則は、製品の原産地にかかわらず、EU市場内での強制労働によって製造された製品の販売を禁止します。規制当局には、調査を行い、該当製品を市場から排除する権限が付与されています。

企業は、サプライチェーンに強制労働が含まれていないことを確認するために、徹底したデューデリジェンスを実施する必要があります。これには、サプライヤーの評価、強固なコンプライアンス体制の構築、そして当局による調査に備えることが含まれます。

FLRの主なスケジュール

  • 2027年12月14日:強制労働製品の販売禁止が本格的に施行されます。
  • 2025年12月13日:EU加盟国は本規則の執行責任を持つ主管当局を指定する義務があります。
  • 2026年6月13日:欧州委員会は、事業者がFLRに準拠するためのガイドラインを公表する予定です。

排出量取引制度指令(ETS)

EUの排出量取引制度(EU ETS)は、気候変動対策の中核をなす政策で、排出量に上限を設け、その範囲内で取引を行うキャップ・アンド・トレード方式によって温室効果ガス排出削減を効率的に推進しています。

エネルギー集約型の業種に属する企業は、自社の排出量を正確に監視・報告し、排出量に見合った排出枠(アローワンス)を確保しなければなりません。また、コンプライアンスコスト削減のために排出削減の機会を積極的に模索する必要があります。

ETSの主なスケジュール

  • 2021〜2030年:ETSの第1フェーズ(取引フェーズ)
  • 毎年4月30日:前年度の排出量に相当する排出枠の引き渡し(アローワンス返還)を企業が行う年次コンプライアンスサイクルの期限

使用済自動車指令(ELV指令)

使用済自動車指令(Directive 2000/53/EC)は、車両の使用終了時における環境負荷を軽減することを目的とし、リサイクル、再利用、資源回収の促進とともに、車両部品に含まれる有害物質の制限を図っています。製造者は、使用済み自動車の無償引き取りサービスを提供し、適切な処理とリサイクルが行われることを確保する義務があります。この指令では、車両重量の少なくとも85%のリサイクルおよび95%の資源回収を義務付ける目標が設定されています。2003年以降に市場投入される車両は、鉛、水銀、カドミウム、六価クロムなどの有害物質を含まないことが求められています(一部の例外を除く)。

これらの継続的な義務は、リサイクルしやすい車両設計に重点を置いており、製造者は新車に使用されるリサイクル材料の割合を報告する必要があります。

分類、表示及び包装に関する規則(CLP規則)

欧州連合の分類、表示及び包装に関する規則(CLP規則)(EC No 1272/2008)は、国連の「世界調和システム(GHS)」とEUの制度を整合させ、人の健康と環境の高い保護レベルを確保することを目的としています。本規則は化学物質の分類と表示を標準化し、EU市場内での安全な使用と自由な流通を促進します。

EU内で化学物質の製造、輸入、または流通を行う企業は、CLP規則に準拠し、物質および混合物を規定の基準に従って分類、表示、包装しなければなりません。これには、新たな危険性分類を反映したラベルの更新、オンラインプラットフォームでの危険性情報の明示、各種包装形式に対応した特定の表示要件の遵守が含まれます。
また、企業は技術進歩適応(ATP)による変更にも注意を払い、例えば第21回ATPに基づく2025年9月までの遵守義務などを適切に実施する必要があります。

日本企業が取るべき次のステップ

欧州のオムニバスパッケージでの規制変更はありますが、現行のサステナビリティ関連の義務は引き続き厳守が求められています。期限が延長されたことは対応を後回しにするチャンスではなく、むしろコンプライアンス体制を強化する好機と捉えるべきです。対応が遅れると、罰則やEUからの資金・投資の機会喪失などのリスクが生じます。

特に、日本企業がグローバル市場で競争力を保つためには、ESPRなど欧州の重要な規制への対応をしっかり進めることが不可欠です。これらの規制を順守し製品のサステナビリティ性を証明することが、経済的リスク(EU企業との取引停止の可能性、ESG監査不合格によるブランド毀損、欧州顧客からのESRSデータ要求の急増など)回避だけでなく、企業ブランドの信頼維持にも直結します。

サステナビリティは単なる法令遵守にとどまらず、長期的に企業価値を高め、変化の激しい市場での強みとなる戦略です。ESG情報の透明性を高めることは、取引先や投資家などステークホルダーの期待に応え、信頼関係を築き、競争優位を維持するうえで重要です。今後も欧州の法改正や動向を継続的にウォッチし、早め早めの対応を進めることが、日本企業の持続的な成長と海外展開成功の鍵となるでしょう。

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Resources

  1. Omnibus I Regulation
    https://commission.europa.eu/publications/omnibus-i_en
  2. Commission Proposes to Cut Red Tape and Simplify Business Environment (2025-02-26)
    https://commission.europa.eu/news/commission-proposes-cut-red-tape-and-simplify-business-environment-2025-02-26_en
  3. Q&A: Commission’s Proposal on Sustainable Finance Simplification
    https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/qanda_25_615
  4. Commission Simplifies Rules on Sustainability and EU Investments
    https://finance.ec.europa.eu/publications/commission-simplifies-rules-sustainability-and-eu-investments-delivering-over-eu6-billion_en
  5. UK Sustainability Reporting Overview – Brightest
    https://www.brightest.io/uk-sustainability-reporting
  6. Corporate Sustainability Reporting Directive (Directive (EU) 2022/2464)
    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32022L2464
  7. Proposal for a Directive on Corporate Sustainability Due Diligence (COM/2022/71 final)
    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A52022PC0071
  8. EU Taxonomy Regulation (Regulation (EU) 2020/852)
    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32020R0852
  9. Regulation (EU) 2023/956 Establishing a Carbon Border Adjustment Mechanism
    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32023R0956
  10. Proposal for a Regulation on ESG Rating Activities (COM/2022/142 final)
    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A52022PC0142
  11. Regulation (EU) 2023/1542 on Batteries and Waste Batteries
    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32023R1542
  12. Proposal for a Regulation on Environmental Claims (Green Claims Directive, COM/2023/160 final)
    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A52023PC0160
  13. Regulation (EU) 2023/1115 on Deforestation-Free Products
    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32023R1115
  14. REACH Regulation – Regulation (EC) No 1907/2006 concerning the Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals
    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32006R1907
  15. Proposal for a Regulation on the Certification of Carbon Removals (COM/2022/453 final)
    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A52022PC0453
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