Case studies
PRecyling

PRecycling
再生プラスチックのトレーサビリティを確立し、安全性とスケーラビリティを実現

PRecyclingプロジェクトは、循環型経済の実現を阻む根本的な課題――すなわち、プラスチック廃棄物の組成や履歴に関する信頼性の高い情報が不足しているという問題――に取り組みました。玩具や家電製品といった業界では、高度な安全基準や複雑な添加剤配合への対応が求められるため、再生材の活用は技術的にも規制面でも大きなハードルとなっています。Circulariseは「Recyclate Track and Trace Methodology(WP4)」のリーダーとして、分散型のトレーサビリティ基盤を実装しました。物理的マーカーおよび化学的「フィンガープリント」を、ブロックチェーンベースのデジタル・プロダクト・パスポートと連携させることで、廃棄物の回収段階から最終消費財に至るまで、データの一貫した流通を可能にしました。

企業名
PRecycling
業種
プラスチック、玩具、家電製品および繊維製品
従業員数
17パートナー企業
タイムライン
4年間(2022年4月~2026年3月)
導入製品
デジタルプロダクトパスポート、サプライチェーントレーサビリティプラットフォーム、スマートクエスチョニング技術

PRecyclingプロジェクトにおいて、プラスチックのサーキュラリティ推進に向けたトレーサビリティの可能性を探求できたことは、大変意義深い機会でした。効率的な循環型経済の実現には、適切な水準のデータ透明性が不可欠です。本コンソーシアムでは、Circulariseのプラットフォーム上でプロジェクトのケーススタディに基づく原則を実証することに成功しました。

Bernhard von Vacano
Vice President Plastics Circularity Research, BASF

PRecyclingプロジェクトは、NTUA、AIMEN、Circularise、BASF、Arçelik、AIJU、Centexbel、Fraunhofer、EuPC、NTNU、DTU、Coolrec、Mirtec、IRES、BIOG3D、Stratagem、アッティカ地域で構成される欧州コンソーシアムです。本プロジェクトは、欧州連合の研究・イノベーションプログラム「Horizon Europe」のもとで資金提供を受けています。本プロジェクトの使命は、プラスチック廃棄物の高度な選別、特性評価、除染に関する新たな手法の開発に加え、規制対応支援、再生材のトレーサビリティ確保、廃棄物管理の高度化を支えるデジタルツールの構築を通じて、高品質な再生プラスチックを生産することです。PRecyclingは、家電、玩具、繊維といった高付加価値用途に重点を置き、主要リサイクラーおよび材料研究機関の知見を結集しています。厳格なEUの安全・品質基準への適合を確保するとともに、強靭な循環型経済の構築を目指しています。

Circulariseは、オランダ発のサプライチェーン・トレーサビリティ・プラットフォームで、企業のレジリエンス向上、排出量削減、新たなビジネス価値の創出を支援しています。2016年の創業以来、原料レベルから最終製品に至るまで、全体を通してデータを収集・可視化する、安全な製品トレーサビリティを実現してきました。
当社のソリューションは、デジタルプロダクトパスポート(DPP)の導入を支援するとともに、ESPR(エコデザイン製品規則)、RED III(再生可能エネルギー指令 第3版)、欧州バッテリー規則といった各種規制への対応をスムーズにします。サムソナイト、エアバスなどのグローバル企業からも信頼を得ており、Circularise の特許技術によって機密性の高いデータを守りながら、監査対応可能なインサイトをご提供します。

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Why PRecyclingがCirculariseを選んだ理由

高品質なリサイクルを実現するために、コンソーシアムが必要としていたのは単なるデータベースではありませんでした。物理的な素材とデジタル情報の間を橋渡しするための体系的な手法が求められていたのです。さらに、使用済み製品の処理プロセスが、安全性およびバージン材同等の品質を確保していることを裏付ける、検証可能かつ監査対応可能なエビデンスが不可欠でした。特に、厳格な安全基準が適用される玩具や家電製品においては、従来の紙ベースの管理や単純な自己宣言では、このような重要性の高い主張を支えるには不十分でした。

そのため、求められたソリューションの要件は以下のとおりです。

  • 原材料から使用終了段階に至るまで、Tier1を超えたエンドツーエンドのトレーサビリティを提供できること
  • リサイクルおよび製造の全工程にわたり、安全性および材料特性を認証することで、再生材の完全性を保証できること
  • サプライチェーン参加者全体の知的財産を保護するため、機密性を担保した情報共有が可能であること
  • 直接のバリューチェーン関係者にとどまらず、試験機関や部品分析・フィンガープリンティングを担う第三者機関からの情報も統合できること
  • 相互運用性を備え、動的かつリアルタイムなデータを取り扱えること
  • 規制当局および認証機関に提出可能な監査対応ドキュメントを提供できること
  • EU持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)への適合に向けた明確な道筋を示せること
  • 玩具のような安全性が極めて重要な製品において、改ざん不可能なチェーン・オブ・カストディ(管理履歴)を確保できること
  • 繊維製品から家電部品まで、多様なデータ形式を扱いながら、業界横断的にスケール可能であること

これらすべての要件を満たしたのはCirculariseのみでした。同社は、安全性・拡張性を兼ね備え、サプライヤー中心のアプローチにより透明性を実現するプラットフォームを提供しています。

データは何らかの形で認証され、その内容が適切に理解される必要があります。データそのものが本システムに取り込まれ、検証され、実際に活用可能な状態になることが極めて重要です。最大の課題は、収集・蓄積され得るあらゆる情報を、意思決定の現場に確実に届け、適切な判断につなげられる状態にすることにあると考えています。

Martin Schlummer
Business field manager recycling, Fraunhofer

実証実験及び実装について

本プロジェクトは、廃棄物から最終製品に至るまでのトレーサビリティ確立と、玩具・家電・繊維製品それぞれの特性に対応したデジタルプロダクトパスポートの開発に注力しました。Circulariseは、複数の技術的検証レイヤーを統合したデジタル化リサイクレート管理プラットフォームの開発を主導しました。

1. トレーシング手法およびフィンガープリンティングの開発

まず、添加剤や汚染物質を特定するため、Substance Flow Analysis(物質フロー分析)を実施し、廃棄物ストリームの実態を把握しました。BASFやAIMENなどのパートナーと連携し、LIBSやRSといった分析技術を用いたコンポーネント分析の結果を、Circulariseのデジタル記録に紐付けました。

2. QRコード対応デジタルプロダクトパスポートの実装

次に、対象製品向けにQRコード連携型のDPPユースケースを開発しました。改ざん不可能な固有のQRコードを物理製品に付与し、Circulariseプラットフォーム上のデータと連携させます。

本システムでは、マスバランス方式による再生材含有率の認証、食品安全および玩具安全区分、特定添加剤の有無、さらには機械特性や追加規制への適合状況など、企業の主張を裏付ける各種情報を認証・表示可能としました。

3. 分散型コミュニケーションの実現

さらに、Circulariseの特許技術を活用し、分散型の情報照会を可能にしました。ステークホルダーは「スマートクエスチョニング」を通じて部品に関する確認を行うことができます。

例えば、リサイクラーは、特定の難燃剤が含まれているかどうかを確認することができますが、元の製造業者は化学組成の全情報を開示する必要はありません。

各業界のユースケースごとにQRコードを開発し、ユーザーがスキャンすることで、最終製品の詳細情報(チェーン・オブ・カストディ、構成部品、過去の処理工程など)を閲覧できる仕組みを構築しました。

なお、資料内で示されたQRコードのユースケース例には、繊維製品、洗濯機のポンプフィルター、玩具から玩具へのクローズドループ事例、家電から玩具へのオープンループ事例が含まれています。

results

実証実験の成果

本協業は、PRecyclingコンソーシアムが循環型社会への移行を加速させるための、具体的かつ戦略的な成果を創出しました。

サプライチェーンの透明性を確立
以下の3つの複雑な循環ループをデジタル上で可視化することに成功しました。

  • 玩具分野:外部の玩具廃棄物および廃家電由来の2つの廃棄物ストリームを活用したボート型玩具をトレース
  • 家電分野:冷蔵庫廃棄物由来の材料から製造された洗濯機用ポンプフィルターをトレースし、ポストコンシューマー由来材料から高性能部品を製造可能であることを実証
  • 繊維分野:カーテン廃棄物を原料とする再利用可能な加工済み繊維製品をトレース

高品質な再生材の認証
デジタル・プロダクト・パスポート(DPP)により、レガシー添加剤の除去確認を含む主要な材料特性を認証。これにより、玩具や家電といった安全性が重視される用途においても、再生材の安全な使用を裏付けました。

デジタル・プロダクト・パスポートの実装
Circulariseプラットフォーム上で追跡されたデータを統合した、業界特化型の実用的なDPPプロトタイプを構築。QRコードを通じて一般公開可能な、安全かつアクセス性の高い情報基盤を実現しました。

機密性を担保した情報共有の実証
スマートクエスチョニング技術により、競合企業やパートナー企業が、事業上重要な知的財産を保護しながら、必要なサステナビリティ情報を共有できることを実証しました。

規制対応への備えを確立
EUのESPRおよびCSRDのデータ要件にあらかじめ整合した仕組みを構築し、コンプライアンス対応に伴うリスクを低減しました。

監査対応可能なドキュメント基盤の整備
ブロックチェーン技術に基づく改ざん不可能な材料由来情報およびチェーン・オブ・カストディを確立し、サステナビリティ主張や各種認証に対する証拠基盤を提供しました。

サプライチェーンのレジリエンス強化
材料品質データを物理製品に直接紐付けることで、二次原材料ストリームの信頼性および予測可能性を向上。製造リスクを低減するとともに、再生材の価値向上を実現しました。

今後の展望

PRecyclingプロジェクトは、循環型経済を支える拡張可能なデジタル基盤として、Circulariseプラットフォームの有効性を実証しました。現在、コンソーシアムは実証段階から本格的な実装・統合フェーズへと移行しています。

各パートナーは、開発した技術のさらなる商業化および活用戦略を検討しています。具体的には、デジタルプロダクトパスポートや検証済み材料データを製品差別化の中核要素として活用すること、また高品質なPRecycling材料を使用した製品に対して、安全性およびサステナビリティに関する認証済みの主張を展開することなどが挙げられます。

さらに、本プロジェクトで構築されたデータ・オントロジーおよびCirculariseによる安全な情報共有プロトコルを含む方法論は、包装材や自動車分野など他業界への展開も可能です。これにより、社会的・商業的に大きなインパクトを創出することが期待されています。

玩具安全規則に関連して、デジタルプロダクトパスポートは適合宣言書(Declaration of Conformity)に代わるものとなります。適合宣言書は、玩具が安全であり市場で販売可能であることを証明するうえで極めて重要な文書です。メーカー各社は、トレーサビリティおよび市場監視を簡素化する観点から、行政手続きや事務負担の軽減にも期待を寄せています。

Luisa Marín
Head of Consumer Goods Services: Chemistry Department, AIJU

最後に

PRecyclingプロジェクトは、トレーサビリティこそが物理的な循環設計と循環型ビジネスモデルを結び付ける決定的な要素であることを示しました。CirculariseとPRecyclingコンソーシアムの協業は、企業が競争力や知的財産を損なうことなく、野心的なサステナビリティ目標の達成、進化する規制への対応、そしてサプライチェーンのレジリエンス強化を実現できることを実証しています。

また本コンソーシアムは、透明性の確保と知的財産の保護が両立可能であることを明確に示しました。本パートナーシップは、環境上の要請と事業成長を整合させるとともに、次世代の持続可能な製造業に向けた指針を提示するものです。

トレーサビリティシステムに関するご質問については、是非弊社チームまでご相談ください。

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