FAIR PVプロジェクト
デジタルプロダクトパスポートで
透明性ある太陽光発電の未来を構築
FAIR PVプロジェクトは、業界が直面する重大なパラドックスに取り組みました。すなわち、脱炭素化に不可欠な太陽光発電の急速な普及が、将来的な廃棄物問題の深刻化やサプライチェーンの不透明化を招く可能性があるという課題です。従来型の太陽光パネルはリサイクルが非常に困難であり、使用材料の由来や製品ライフサイクルにおける性能に関する可視性も確保されていませんでした。
コンソーシアムはCirculariseとの連携により、修理可能な新型太陽光パネル向けに、動的なデジタルプロダクトパスポートを開発しまし、これにより、材料情報、製造工程、性能データを含むバリューチェーン全体の情報を、安全かつ検証可能な形で記録・共有する仕組みを実現しました。本プロジェクトは、徹底した透明性の確保が実現可能であること、そしてそれこそがリファービッシュメント、高付加価値リサイクル、さらには今後強化される規制への対応といったサーキュラー戦略を推進する鍵であることを実証しました。
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エネルギートランジションは、透明性とサーキュラリティを基盤として構築されなければなりません。Circulariseとの協業は、この使命を実現する上で中核的な役割を担っています。
同社のテクノロジーにより、当社は倫理的に調達された原材料の使用から製品寿命終了後のリサイクル可能性に至るまで、機密性の高い知的財産を損なうことなく、当社パネルの持続可能性を実証することが可能となりました。これは単なる規制対応にとどまるものではありません。太陽光業界全体にとって、公正で新たなスタンダードを創出する取り組みなのです。
太陽光PV向けに包括的なデータ・オントロジーを確立し、実用的なデジタルプロダクトパスポートのプロトタイプを立ち上げました。
競合他社およびサプライチェーンパートナー間における、安全かつ機密性を確保したデータ共有の枠組みを構築しました。
Created the foundational transparency required for compliance with the EU Ecodesign for Sustainable Products Regulation (ESPR) and CSRD.
Fair PV プロジェクトについて
FAIR PVプロジェクトは、Biosphere Solar、AMS Institute、TU Delftで構成されるオランダのコンソーシアムであり、「循環型経済のための知識・イノベーション・アジェンダ(KIA-CE)」のもとで資金提供を受けています。本プロジェクトの使命は、完全に修理可能かつ再生利用可能で、調達プロセスの透明性を確保した世界初の太陽光PVモジュールを開発することです。液体ベースの封止技術やモジュール設計といったハードウェアイノベーションと、動的デジタルプロダクトパスポートをはじめとするデジタルイノベーションを融合させることで、太陽光業界のサーキュラー化を推進しています。
About

Circulariseは、オランダ発のサプライチェーン・トレーサビリティ・プラットフォームで、企業のレジリエンス向上、排出量削減、新たなビジネス価値の創出を支援しています。2016年の創業以来、原料レベルから最終製品に至るまで、全体を通してデータを収集・可視化する、安全な製品トレーサビリティを実現してきました。当社のソリューションは、デジタルプロダクトパスポート(DPP)の導入を支援するとともに、ESPR(エコデザイン製品規則)、RED III(再生可能エネルギー指令 第3版)、欧州バッテリー規則といった各種規制への対応をスムーズにします。サムソナイト、エアバスなどのグローバル企業からも信頼を得ており、Circularise の特許技術によって機密性の高いデータを守りながら、監査対応可能なインサイトをご提供します。
FAIR PVがCirculariseを選んだ理由
FAIR PVプロジェクトは、太陽光パネルを使い捨て製品から耐久性の高い循環型資産へと転換するという明確な目標のもとに始動しました。分解可能な設計を採用したBiosphere Solarのハードウェア革新は、課題の一部を解決しましたが、それだけでは十分ではありませんでした。サーキュラリティに関する主張を実証し、新たなビジネスモデルを可能にするためには、デジタル基盤の構築が不可欠でした。
Tコンソーシアムが設定した選定基準は非常に厳格なものでした。求められた要件は以下のとおりです。
- 原材料から使用終了段階(End-of-Life)に至るまで、一次サプライヤー(Tier1)を超えたエンドツーエンドのトレーサビリティを確保できること
- 材料配合や加工技術など、サプライチェーン参加者の知的財産を保護するため、機密性を担保した情報共有が可能であること
- 性能劣化や保守履歴といった動的・リアルタイムデータを取り扱える相互運用性を備えていること
- 規制当局および認証機関に提出可能な監査対応ドキュメントを提供できること
- EU持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)への適合に向けた明確な道筋を示せること
Circularise はこれらすべての要件を満たし、安全性・拡張性を兼ね備え、サプライヤー中心のアプローチによって透明性を実現するプラットフォームを提供しています。
実証実験と実装について
本実証実験は、太陽光業界特有のニーズに対応した動的デジタルプロダクトパスポートの開発に焦点を当てました。取り組みは、以下の2つの主要フェーズで構成されました。
- オントロジー開発(TU Delft & Circularise)
まず、DPPの設計図となる高度なデータ・オントロジーを構築しました。原材料の由来や有害物質の含有情報から、リアルタイムの発電量、修理履歴に至るまでを網羅するため、176のデータクラスと131のプロパティを体系的に整理・定義しました。
また、12名のステークホルダーへのインタビューから、重要な業界ニーズが明らかになりました。それは、再利用やリファービッシュメントの意思決定においては、パネルの初期仕様よりも「現在の状態」に関するデータの方が高い価値を持つという点です。
- プラットフォーム統合およびプロトタイピング(Circularise)
構築したオントロジーを基盤として、Circulariseは自社プラットフォーム上に実用的なDPPプロトタイプを構成しました。同プラットフォームでは、特許取得済みのSmart Questioningテクノロジーを活用。これにより、ガラスサプライヤー、セルメーカー、リサイクラーなど、サプライチェーン上の各主体が、自社の全データを開示することなく、検証可能なデータ要求に応答できる仕組みを実現しました。
本プロトタイプでは、規制対応およびサーキュラリティ推進に必要な主要情報(再生材含有率、カーボンフットプリント、材料構成、検証可能なトレーサビリティ情報など)を可視化し、その有効性を実証しました。
主な成果
本協業は、FAIR PVコンソーシアムが循環型社会への移行を見据える上で、具体的かつ戦略的な成果を創出しました。
- サプライチェーンの透明性を確立
太陽光PVのバリューチェーン全体を標準化されたオントロジー上にマッピングし、製品関連データの「単一の信頼できる情報基盤(Single Source of Truth)」を構築しました。 - デジタルプロダクトパスポート実装
静的データ(例:部品表)と動的データ(例:予測される健全度)を統合し、安全かつアクセス可能な形で管理する、業界特化型の実用的なDPPプロトタイプを立ち上げました。 - 機密性を担保した情報共有の実証
Smart Questioningテクノロジーを活用することで、競合企業やパートナー企業が、事業上重要な知的財産を保護しながら、必要なサステナビリティ情報を共有・連携できることを実証しました。 - 規制対応への備えを確立
EUのESPRおよびCSRD、さらには将来的に想定される太陽光分野特有の規制要件にあらかじめ整合する仕組みを構築し、コンプライアンス対応に伴うリスクを大幅に低減しました。 - 監査対応可能なドキュメント基盤の整備
ブロックチェーン技術に裏打ちされた改ざん不可能な材料由来情報およびトレーサビリティ記録を確立し、サステナビリティ主張や認証取得に対する確固たる証跡を提供可能としました。

今後の展望:サーキュラリティのスケール化
本実証実験の成功はゴールではなく、本格展開に向けた出発点です。FAIR PVコンソーシアムでは、次のフェーズに向けた具体的な取り組みを進めています。
リビングラボでの実証
デジタルプロダクトパスポートおよび循環型太陽光パネルを、アムステルダムのInnovation Pavilionにおいて実環境下で検証します。施工事業者、保守事業者、リサイクラーなど多様な関係者を巻き込み、ワークフローおよびビジネスモデルの妥当性を実証します。
循環型パネルの商業化
Biosphere Solarは、DPPを市場差別化および販売戦略の中核要素として活用し、サステナビリティを重視する公共機関および民間企業を主要ターゲットとして展開していきます。
業界全体への展開
Circulariseは、FAIR PVで構築したオントロジーおよび知見を活用し、他の太陽光メーカーやリサイクラーの参画を促進します。これにより、トレーサビリティの業界標準化を推進し、循環型経済のスケールメリット創出を目指します。
最後に
FAIR PVプロジェクトは、物理的な循環設計と循環型ビジネスモデルを結び付ける上で、トレーサビリティが決定的な役割を果たすことを示しました。CirculariseとFAIR PVコンソーシアムの協業は、企業が競争力や知的財産を損なうことなく、野心的なサステナビリティ目標の達成、進化する規制への対応、そしてサプライチェーンのレジリエンス強化を実現できることを実証しています。
本プロジェクトは、構想段階から実装段階への移行を実現するものです。私たちは単により優れた太陽光パネルを開発しているのではなく、循環型経済全体を成立させるために不可欠な、信頼性の高いデータ基盤を構築しています。Circulariseは、当社の革新的な設計と、市場が求める「検証可能かつ実行可能な真実」を結び付ける、これまで欠けていた重要なリンクを提供しています。
