持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)は画期的な制度となるでしょうが、同時に多くの課題も伴います。
企業は、重複する報告義務、厳しい期限、時代遅れのシステムの近代化の必要性といった問題に対応しなければなりません。それと同時に、サプライヤーやステークホルダーとの関係を維持・強化していく必要もあります。
本記事では、これらの課題について詳しく解説し、貴社が対応するための実践的な戦略をご紹介します。

ESPR遵守における主な課題とは?
1. 重複する報告義務
ESPRは単独で運用されるものではありません。企業は、企業の持続可能性デューデリジェンス指令(CS3D)や企業持続可能性報告指令(CSRD)など、他の報告枠組みにも同時に対応しなければなりません。これらの枠組みが重複することで、混乱が生じたり、事務的負担が増加したりする可能性があります。この課題に対処するには、以下のような対策が有効です:
- 自社が影響を受ける各種規制を特定する
- 各規制要件の共通点を把握するためのギャップ分析を実施する
- システム統合によりデータ収集プロセスを効率化し、作業の重複を削減する
- すべてのサステナビリティ報告要件を監督し、枠組み間の整合性を保つためのコンプライアンス責任者または専任チームを任命する
2.差し迫る対応期限
ESPRでは、段階的なコンプライアンス期限が設定されており、早ければ2025年から一部の要件が適用され始めます。グローバルなサプライチェーンを持つ企業にとって、これらの期限は非常に厳しく感じられるでしょう。特に、まだ準備を始めていない企業にとっては深刻です。以下の対策で準備を進めましょう:
- 主要なESPR期限に向けて明確なマイルストーンを盛り込んだコンプライアンスロードマップを作成する
- DPPや廃棄物管理システムなど、リスクの高い分野を優先的に対応する
- スケジュールの現実性と実行可能性を確保するため、外部コンサルタントや法務アドバイザーに相談する
3. サプライヤーの疲弊
サプライヤーは、データの提供、新しいプロセスの導入、さまざまなコンプライアンス基準への対応など、要求が増す一方です。このようなサプライヤーの疲弊は、遅延や協力体制の崩壊を引き起こし、ESPR準拠を妨げる可能性があります。特に、ESPRに不慣れな欧州域外のサプライヤーと協業する場合は、困難が生じるリスクが高まります。
この課題への対応策は以下の通りです
- 明確なガイダンス、テンプレート、ツールを提供し、サプライヤーとの協力体制を強化する
- 欧州域外のサプライヤー向けに分かりやすい説明や研修を実施し、要件への理解を促す
- サプライヤーが自らの役割を理解し、対応できるよう長期的なパートナーシップを構築し、教育やリソースを提供する
- 頻繁な監査やリクエストで負担をかけないように、サプライヤーのコンプライアンスチェックをローテーション制にする
- DPPを活用して、グローバルなサプライチェーン全体でのトレーサビリティとデータ共有を効率化する
- 業界の同業者と連携して、共有基準と期待値をサプライヤーに示す
4. 既存システムでの限界と煩雑なプロセス
メールのやり取りや分断されたデータベースなど、従来の管理方法では、ESPRが求める複雑なデータ共有やトレーサビリティの要件を満たすことは困難です。古いシステムに依存してコンプライアンス対応が遅れないように、以下のアプローチが有効です:
- ブロックチェーンベースのシステムや統合型のコンプライアンスプラットフォームなど、相互運用性を持つ最新のデータ管理・トレーサビリティツールに投資する
- データ収集や報告といった反復作業を自動化し、エラーを減らし、効率を向上させる
- メールベースのやり取りから脱却し、リアルタイムでのデータ共有・更新が可能な共同作業プラットフォームに移行する
5. 社内の連携不足
ESPRへの対応には、設計、法務、調達、マーケティングなど、複数の部門の協力が必要です。しかし、これらの部門間で足並みが揃わないと、遅延や非効率が生じる可能性があります。この課題に対応するためには:
- ESPR対応を専門とする部門横断的なチームを立ち上げ、定期的なコミュニケーションと目標の共有を促す
- 部門間の進捗と責任を可視化するためにプロジェクト管理ツールを活用する
- すべての部署がコンプライアンスの重要性と自分の役割を理解できるよう、全社的な研修を実施する
6. 財政的・人的リソースの制約
ESPR対応には、技術投資、社員研修、業務の見直しなど、大きな初期コストが発生します。このような負担を軽減するためには、以下の戦略が考えられます:
- サステナビリティに取り組む企業を支援する政府助成金や補助金を活用する
- コンプライアンス対応を段階的に実施し、コストを分散させる
- 業界団体とのパートナーシップを活用し、リソースを共有・コストを削減する
サステナビリティへの道のりには多くの課題が伴いますが、それぞれの障害は、企業のサステナビリティ体制を強化するチャンスでもあります。
重複する報告枠組みへの対応、サプライヤーとの連携、システムの近代化、社内連携の強化などに取り組むことで、企業は規制に適合するだけでなく、循環型経済への移行をリードする存在となることができるでしょう。
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